阪神 悩める快速右腕、石崎を救った掛布2軍監督  デイリースポーツ

最速155キロの直球に秘められた熱い、熱い思い。阪神・石崎剛投手(26)が追い求めるストレートは、分かっていても打たれない“火の玉”の様な魔球だ。ケガに泣き、メンタルの弱さを指摘された過去の姿はない。抜群の身体能力を生かした投球は、18・44メートル先の打者を圧倒できる。

「一番大切なのは、気持ちだと思います」-。8月9日に今季初昇格を果たし、ここまで9試合に登板(8月31日現在)。厳しい場面も自慢の直球で抑え込み、防御率0・00は立派な数字だ。

「いい意味で、打者を上から見ることも大切だと思っています」。魂を込めて投じる今の球に、自信はある。「自分の一番いい時を思い出す」ことで、苦しい状況も乗り越えられている。

昨シーズンは、思うようにいかない日々が続いた。1軍戦10試合で防御率1・69と結果が出始めた時に、右肘痛(インピンジメント症候群)で離脱。心身両面の弱さを感じながら、一方でそれを認められない自分もいる。そんな悩める右腕に対し、厳しく接したのは掛布2軍監督だった。

「試合を壊した次の日に、周りの選手とじゃれ合いながら野球をやっていたんだよ。あの時は厳しく言った」

10月のみやざき・フェニックスリーグ。ネット裏で四藤球団社長が見守る一戦で、不安定な投球を露呈した。翌日、掛布監督の目には反省している様子が感じられなかったのだろう。首脳陣、選手らが周りにいる中で、珍しく怒声を浴びせた。「サヨナラ負けした後にヘラヘラするなよ!」。一言一言が、石崎の心に突き刺さった。

「何かを変えないといけない」と臨んだ秋季キャンプ。矢野作戦兼バッテリーコーチから「左肩を内側に入れ過ぎている」と助言を受け、一筋の光が差し込んだ。台湾のウインター・リーグでは、7試合に登板して防御率0・00、リーグトップの3セーブ。視察した掛布監督は「一番心配していた選手だったんだけど、本人も手応えを感じていると思うよ」とホッとしていた。

今年の1月には結婚を発表し、より一層マウンドへの思いは強くなった。幼い頃の夢は「自衛隊に入ること」。人一倍正義感が強く、誰に対しても柔和な表情で優しく接する好青年だ。プロ3年目の26歳。チームのため、家族のため、今はがむしゃらに前へ進む。

入団時、憧れの投手を問われた石崎は「藤川球児さんです」と答えた。分かっていても、打たれないストレート-。恐れるものは何もない。指先から放たれるボールは日々、その威力を増している。

(デイリースポーツ・中野雄太)